お題が「意外な組み合わせ」と言うことで、ナニを勘違いしたのかアミダ籤を用意してみました、葵さん。
で、端からコナンとマジ快の主な登場人物の名前を書き込んで、レッツアミダ。
アミダ籤の結果平和を引いたらそれはそれで運命よね〜〜〜などと思ってたのですが(意外でもなんでもない組み合わせですが)
引きゃぁしません切腹。
というわけで、こんな二人になりました。
***
張りこみ交代後の太陽は眼に痛かった。
徹夜。しかも収穫なし。
こんな日はさっさと帰って可愛い娘の顔を見たら寝てしまうに限る。どうせまた、今晩から張りこみなのだ。
毛利小五郎は大きく一つ伸びをした。肩が凝って仕方がない。
タバコを一本取り出して火を点ける。そのまま両手をズボンのポケットに突っ込むと歩き出した。柔道の嗜みがあるせいか、どんなに疲れていても毛利小五郎は姿勢がいい。
しかし鍛えあげた肉体もここ数日のオーバーワークで限界。眠くて眠くて仕方がない。眼がショボショボしてしまう。
あーーー。
立ち止まって空を見上げた。
今日もいい天気だぜ……。
***
愛しい妻と可愛い娘の待つ街までは電車を乗り継いで30分ほど。毛利小五郎は雑踏をトボトボと、しかし背筋を伸ばして歩いていた。瞼の重みと懸命に戦う。眠い。ニコチンも、今はなんの覚醒効果も認められなかった。ただ煙を吐きだすだけ。
ふ、と。雑踏の中、一人の少女が眼に止まった。
まだ朝早い人の波は殆どがこれから出勤する人の流れ。その中で、踏み潰されてしまうのではないかと思うくらいピンクのワンピースの裾をヒラヒラさせ赤い帽子を被ったその少女は小さい。
両手には大きな兎のぬいぐるみを抱えている。本人の2/3はあろうかという白い兎のぬいぐるみ。少女が歩を運ぶ度にその白い大きな耳が揺れる。
行きかう人波の中。小走りに数歩。立ち止まってキョロキョロして、また数歩。
……おいおい。迷子かよ。
こんな朝早く。こんな都会で。周囲の大人達は自分のことで手一杯で、ぶつからないように避けて歩くのが精一杯。時折心配そうな視線を送るものの、立ち止まる余裕のある人はいないらしい。
……しょうがねぇなぁ。
タバコを消して少女に近づく。ふ、と少女が振り返った。
おいおいおいおいおい!!
思わず小五郎の顎がカクンと落ちる。振りかえったその顔は。
蘭じゃねぇかよ!!
一瞬の後、小五郎に気付かぬ愛娘はまたキョロキョロ。大事そうに抱えた兎のぬいぐるみの耳がフワフワと揺れる。
……あんなぬいぐるみ、持ってたか……?
ピンクのワンピース。何枚か持っているはずだが、それにしても見覚えがない。まあ、蘭の服は自分のスーツと違って自然増殖の如く増えていくので、絶対に違うとは言えない。
何はともあれ。
……英理はどうしたんだ?
幼い娘が一人でこんな時間にこんな場所にいるとは思えなかった。無論、張りこみの場所など家族には話していないし、この街にいたのは偶然だろうが、それにしても一人はありえないだろう。
……まったく。ちゃんと手ぇ繋いどけってんだ。誘拐でもされたらどうすんだ?
人波をかき分けながら、大股で娘に近づく。
「おい、蘭」
なるべく優しい口調で、小五郎は娘の肩に手をかけた。
***
小さな体が跳ねあがるように反応し、少女が全身で振りかえる。瞬間、小五郎の顔から血の気が引いた。
……蘭じゃねぇ!!
よく似ている。よく似てはいるが、別人だ。他人なら見間違えるかもしれないが、自分の娘だ。先入観なくちゃんと見ればすぐわかる。
が、小五郎がうろたえたのはなにも愛娘を見間違えたからではなかった。
少女の青褪めた頬、そして大きな瞳がみるみると潤んでいく。
……これじゃあ、俺が誘拐犯じゃねぇかよ!!
思わず周囲を振りかえる。案の定、足早に過ぎる中にもいくつかの不審気な視線。
……人相がとりたてて悪いわけでもないが、よいともいえない。目つきはどうしたってよくない。刑事の悲しい性である。
「お嬢ちゃん、迷子?」
努めて優しげに笑うと、こぼれ落ちんばかりの涙が一歩手前で止まる。少女がそのまま大きく肯いた。
「誰と一緒に来たんだ?」
「……いないの」
「お母さん?それともお父さんかな?」
「ううん」
歳は娘と変わらないだろう。蘭より幾分短めの髪。大きな瞳。手の中の兎をぎゅっと抱きしめる。
「カイトがいないの」
***
駅前の派出所の丸椅子に座る少女に買って来たジュースを渡すと、たどたどしく礼を言って小さく頭を下げた。なかなかに、礼儀正しい。
なんとか宥め透かして手を引いて派出所まで連れてきたものの、駐在に引き渡そうとしたところで万引き事件発生。最初に身分を言っていたこともあって、警官は「刑事さん、ちょっとこの子お願いします」と一言置いて飛びだして行った。最近この地区で悪質な万引きが多発しているのは知っている。
毛利小五郎は溜息をついた。娘は可愛い。自分の娘は可愛いが、しかし子供はどちらかと言うと苦手なのである。
「……それで、お嬢ちゃん。お名前は?」
「青子」
「歳は?」
「5歳」
娘の蘭と同じ歳だ。親ではなく、他人が見れば間違えるだろう。やっぱり似ている。
「誰とここにきたんだっけ?ええと……」
「カイト」
カイト。変な名前だ。思い浮かべるのは青空を泳ぐ、二等辺三角形の凧。
「おうちは?この近く?」
「うん。赤い橋の近く」
確かに近い。
「じゃあ、青子ちゃんはカイトと二人でここまで来て、はぐれちゃったんだね」
「ううん」
首を振ると、柔らかい癖っ毛がふわふわと揺れる。
「三人で来たの」
「あ、そうなのか。じゃあ、青子ちゃんだけはぐれちゃったんだな?」
「ううん。この子も一緒に来たの」
「……あ、そう」
青子が小五郎の目の前にずいと差し出したのは兎のぬいぐるみ。黒い円らな瞳が今は少し恨めしい。
……相手は子供だ。
不思議なもので、これが自分の娘だとただ可愛いだけなのに、そうでないと一抹の疲労を感じる。人の親とは変なものだ。
「じゃあ、この子と青子ちゃんとカイトと一緒に来て、カイトだけがはぐれちゃったんだな?」
「うん……」
青子の瞳に再び大粒の涙が浮かび上がる。
「青子、待ってって言ったのに……カイトが早く早くって、どんどん先に行っちゃっうの……」
両手の兎を抱きしめる。兎の後頭部が涙で濡れた。
「あ〜〜〜、青子ちゃん泣かない泣かない。うさちゃんが涙で濡れちゃうぞ?」
「カイト〜〜〜〜〜〜〜」
「あー、こら、泣くなって。今度はりんごジュースにするか?それともチョコがいいか?飴か?」
「チョコ」
ガクッ。
青子の顔を覗きこむようにしゃがみこんでいた小五郎はそのまま地に伏せた。これだから子供は。
「あとね」
「はいはい」
「この子、うさちゃんじゃないもん。ちゃんと名前があるもん」
「そら失礼したな。なんて名なんだ?」
「カイト」
立ち上がりかけた小五郎はそのまま再び膝をついた。……話が、振りだしに戻った気がする。
***
片手に兎のぬいぐるみを抱えた青子の片手を引いて、小五郎はコンビニで青子の選んだチョコを一箱買ってやった。また迷子になられても寝覚めが悪いので、片手にぬいぐるみとチョコを持たせて小さな手は離さずに派出所に戻る。
蘭と同じ、小さな手。
そう思うと段々可愛く思えてきて、子供特有の支離滅裂な話にも耐えられるようになってくるのだから、ホントに親とは不思議なものだ。
コンビニの往復でなんとか話が見えて来た。どうやら青子は「カイト」と「兎のカイト」と一緒に駅までやってきて、そして「カイト」とはぐれてしまったらしい。
それにしても。連れも「カイト」。大事に抱えるぬいぐるみも「カイト」。
一体何者だ?
最初は親兄弟かと思っていたが、そんな名をぬいぐるみにつけるだろうか。つけちゃいかんという話はないが、微妙に違和感を感じる。
「ところで青子ちゃん」
「なあに?おじさん」
うっ、と小五郎はつまる。何しろこれでも25歳。一児の父とは言えおじさんと呼ばれる歳でもない。
が、5歳の青子にしてみれば20歳も25歳も50歳もおじさんに違いない。
「その、カイトってのは誰なんだ?」
「カイト」
単純明快な一言。疑問符のついた気配はなかったが、一応小五郎は続く言葉を待った。が、青子の大きな瞳は揺るぎをみせない。
「えーーーーーーっと」
「カイトは、カイトだよ」
予想していた返答に項垂れる。しかしここで挫けるわけにもいかない。
「これからそのカイトを探さなきゃなんねぇんだ。わかるだろ?名前と歳と、あとそうだなあ、今日着ていた服とか。教えてくれ」
「うーーん」
小さな青子は首を捻る。角を曲がれば派出所だ。
「カイトはねえ……カイト。あのねえ、青子と同じ歳だよ」
「え」
てっきりもっと年上だと思っていた。近所のおにいちゃん。そういったものを想像していたのだが。
頭の中で描いていた人物像を慌てて変更する。と言う事は、5歳児二人で朝の駅前の雑踏におでかけしたってことだ。一体、親は何をやっているのか。
小五郎は心持ち天を仰いだまま派出所への角を曲がった。
瞬間。
バサバサバサバサバサ!!
何かに視界を遮られた。白い何かは有機的な予測不能な動きで寧ろ小五郎に向かってくる。一つ二つではない。
本能的に、小五郎は両手で顔面をかばった。
「青子、来い!!」
「快斗!!」
隣の青子が駆け出す。何が起きたかわからないままに青子を捕らえようとした小五郎の右手は宙を切った。
「この、誘拐犯!!」
「なにぃ!!」
濡れ衣も良いところだ。慌てて自分に向かってくる鳩を振り払いつつ、反論を試みる。
「迷子になってんの保護してやっただけじゃねぇか!!」
「嘘つけ!!青子、大丈夫か?何もされなかったか?」
「うん。青子平気!!快斗、あのね、チョコ買ってもらったの!!」
「バカ!!知らないおじさんにモノ買ってもらっちゃダメだって言われてただろ!!勝手についてっちゃダメだって!!」
「……ごめんなさい」
青子は嘘は言っていない。言ってはいないがこれでは丸っきり自分が誘拐犯ではないか。もう少しフォローになりそうなことを言って欲しいものだ。
「だから。俺は誘拐犯なんかじゃ……」
「うるさい!!これでもくらえ!!青子、行くぞ!!」
ポン、と軽い音を立てて何かが弾けると共に無味無臭の煙が小五郎を襲った。煙玉。一体なんだって単なるガキがこんなものを持ち歩いているんだか。
煙の中に突っ込んで二人を捕まえてもよかったのだが、なんだかそんな気すら失せてしまって小五郎はその場に立ち尽くしていた。
案の定、煙の晴れる頃には自分の周りには遠巻きに人だかり。駅前の派出所前でこんな騒ぎを起こせばまあ、当たり前だろう。多数の視線に居心地を悪くしていると、人波を掻き分けて一人の中年女性が派出所の駐在の手を引いてやってきた。そう言えば万引き犯は捕まったのだろうか。
「刑事さん、こっちこっち」
「ちょ、ちょっと」
「この人!!この人が誘拐犯らしいのよ!!」
女性の指差す先を見て、警察官は姿勢を正すと敬礼した。
「毛利刑事!!お疲れ様であります!!」
「……おう。そっちの万引き犯はどうしたよ」
「面目次第もございません。……取り逃がしてしまい……」
「ま、仕方ねぇな」
「あの、迷子の少女は無事保護者の元へ?」
「あーー」
事態を察したギャラリーが散っていく。警察官を連れてきた女性もばつが悪そうに頭を下げるだけでそのまま立ち去っていく。無責任極まりないが呼びとめる気力さえ今の小五郎にはなかった。
「保護者だかなんだか、とりあえず迎えは来た。大丈夫だろ」
「そうでありますか!!で、誘拐犯はどこに?それにこの煙は……」
「あーーー」
ポンと若い警察官の肩を叩く。
「ま、忘れろや。それよりさあ」
「は!!」
「……すんげぇ眠いんだけどよ。パトカーで送ってもらえないかな」
「さ、さすがにそれは……あの、すぐタクシーを呼びますので……」
***
帰宅すると、蘭はまだお昼寝タイムだった。幼い寝顔。確かに青子によく似てはいるが、やはり娘が一番だ。……親バカだろうか?
ふ、と自分の右手に眼をやる。あの時、空を切った右手。妙な空虚感が伴ったのは青子が蘭に似ていたからかもしれない。
娘を奪われる擬似体験。
そのせいか、鳩と煙で禄に見えなかった「カイト」の姿が、娘の幼馴染にすり変わってしまう。
……まあ、有希ちゃんの子供だし……旦那もまあ、いいやつなんだけどなあ。
娘の父なんてもんはこんなものかもしれない。相手が誰であれ、こんな感情は多かれ少なかれ抱くはずだ。
……ま、まだまだ先のことだろうけどよ。
今から杞憂に感じるだけ損というものである。小五郎はそっと娘の頬を撫でた。
「……お父さん?」
「ん?起こしたか、蘭。寝てて良いぞ」
「うん。……お帰りなさい」
小さな娘は再び眼を閉じる。
それだけで、小五郎は心の底から癒されるのであった。
てな訳で、引いたのは青子ちゃんと小五郎さんでした……この二人でナニをどうしろと!!激しく後悔しました。
その割には結構きちんと書けたかな〜と思っているのですが、このダラダラっと長い感じは相変らず改善されません。
どうしたもんだかなー。
若い頃の小五郎さんのイメージがいまいち……難しくて……。
昔からいい加減(?)な感じもあり、でも「十四番目の標的」の小五郎さんはかにゃり硬派なイメージ。
どんな喋りになるんだろう……と思いつつ頭の中では現在の小五郎さん喋りがグルングルン。うむむー。
ちなみに青子ちゃんがウサギのぬいぐるみを抱えているのは某サイト様のアイコンの影響ありありですにゃ(失笑)
ところで……時計台の快青ってもしかしなくても初対面です?あわわ。5歳じゃまだ出会い前でした??ビクビクー。
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