服部家の庭の小さな楓の木が、綺麗に色づいた。
池に一枚二枚と葉が落ちて庭を抜ける晩秋の風にさざめく波に揺れる。
また一枚。風に楓の葉が舞った。
「もう秋も終わりやねぇ」
お茶を持って居間に入ってきた和葉が庭を見ながら湯飲みを二つ座卓に置く。
「急に寒なったからなあ。おかげで毎朝布団から出るんが難儀でかなわんわ」
縁側の火鉢を火掻き棒でがさがさと探りつつ平次が返す。
今日はガッコの友人連中と朝から紅葉狩りに行く約束だったのだが、先日行われた模試の結果が悪かった数名が休日補講対象となり、流れてしまった。
「なあ、平次」
「んあ?」
「暇なんやろ?」
「んなことないで。芋焦がさんように全神経使てるし」
「そういう意味やのうて。今日、暇なんやろ?」
「飯尾が絶対空けとけ言うから死守したんやけどなあ。本人が筆頭で赤点取っとったら世話ないわ」
「しゃあないやん……抜きうちやったし。そんで平次は暇やねんやろ?」
「まあ、なあ」
まだ時計は朝の7時。この幼馴染がこんな朝早くから服部家に来る理由が火鉢で焼かれている焼芋のご相伴に預かるためでないことくらい明白。
「紅葉狩り、行こ」
「どこ行くねん。京都は飯尾らが来週絶対リベンジする言うてたやん。お前も行くんやろ?」
「んー、せやからもっと近場とか。奈良とか。あ、まだ時間早いし高野山とか」
「来週行くんやろ?ええやん、別に」
「そんなら今日はゴロゴロしてんの?」
「んー」
別段気が進まないわけでもないが気が乗るわけでもない。
徒に火鉢をつつく。ホイルに包まれた芋から目を離さずに座卓の湯飲みに手を延ばしたところに、母の静華が現れた。
「あったあった。これやこれや」
片手にはスナップと思しき写真が一枚。
「どないしたん?おばちゃん」
「春に和葉ちゃんが言うてたやん。昔、桜の季節に京都の和葉ちゃんの親戚んとこ行った時、着物着た話」
和葉の顔が僅かに曇るのを平次は見逃さない。
……まだ気にしとんのんかい。あんな話。
雑誌のインタビュアーに聞かれるままに気軽に答えた初恋話に幼馴染が過剰に反応したのは今年の春のこと。
もう何年も前のことだったし名前もどこの誰かもわからない。桜の下で鞠をついていた少女。
あの、桃源郷の桜バージョンかと思える位に幻想的な光景が脳裏に焼きついていたのは事実だが、だからと言って何がどうというものでもなかった。
聞かれるまでは忘れていたが、思い出すとなんとなく気にかかり、気にかかり出すと色々思うところもあり、探してみようと思ったのは事実。実際、以来京都に行く機会があると探していた。
しかしそれがどうやら幼馴染の気に障ったらしい。
別に悪いことでもないのだが、この幼馴染は感情をストレートに出すかと思うと、妙に気を使って本心を隠すことがある。水晶をなくさないようにと小言を言ったり、ご丁寧に小さな巾着を用意してくれたりしていたので、純粋にこの「初恋の少女探し」を応援してくれているのだと思っていた。
工藤には、思うお前がアホや、言われたけどな。
別段、その初恋の相手がみつかったところで自分と幼馴染の間の何が変わるというわけでもない。そう思っていたから。和葉が気にすることでもないだろうと思っていたのだ。
工藤には、思うお前がボケや、言われたけどな。
「写真って、なんなん?おばちゃん」
微妙な色合いを含んだ声に、もう一度その表情を窺う。
「和葉ちゃんが着物着たあん時の写真、一枚も残ってへんて話したやろ?あれ、一枚だけあったわ。今朝急に思い出してん」
「え?」
「着せてもうてる途中やけどな。ほら」
和葉に渡されたスナップを、焼けた芋を机に置いてから平次も身を乗りだして横から覗きこむ。
写真の中の少女は、紛れもなく、和葉。
着物を着せてもらい嬉しそうに少しはにかんだように笑っている。恐らく最後の帯揚げを結ってもらっているのだろう。
髪はまだ結わずに下したまま。化粧もこれからと思われる。
この状態なら、見間違えようもない。
……大体、なんでいつもの馬の尻尾ちゃうかったんや。ややこいことしおって。
そもそも。山王寺の桜の下の和葉を見た時には距離もあったし、斜め45度の角度で見下ろしたのである。顔なんて、実は殆ど見えなかった。
工藤には、声でわかれ、言われたけどな。
「へーーえ」
別に。和葉の着物姿など今更ではあったが。
「よう似合てるやん」
「せやろ?和葉ちゃんメッチャ可愛かってんで?それをあんたは退屈や言うて遊びに行ってまうし、戻って来うへんし」
「……なんで写真がこれ一枚なんや?」
「そら、あんたのせいやん」
静華の即答に平次は眉を顰める。
「なんで俺のせいやねん」
「せやかて着付け終わったら和葉ちゃん、あんた探しに飛んでってまうし。そんで二人とも帰って来うへんから雄飛おじさん、カメラ持ったままあんたら探しに行ってまうし。そのうち和葉ちゃんは諦めて帰ってきたけど、あんたも帰って来うへんしカメラも戻って来うへんし」
そうこうするうちに帰宅時刻が近づいてしまい結局ちゃんとした着物姿は一枚も記録されることなく終わったのだという。平次が戻る頃には和葉は服に着替えて帰り支度も万端だった。それから母に急かされて支度して、失礼する門で息を切らせた雄飛おじさんに会ったことはぼんやり憶えている。
偶然の重なりいうんは、怖いもんやなあ。
一枚でも写真が残っていれば。一度でも和葉があの歌を自分の前で歌っていれば。
あの水晶が仏像の百豪だと気付いていれば。
こんなややこしいことにはならなかったのかと思うと妙な感じがする。
「なっつかしいなあ……」
感慨深く、和葉が呟く。
「ホンマ、メッチャ綺麗やってんで?桜の花弁、風に舞って。桃源郷みたいやってんから!!」
「アホか。桃源郷は桃やろ?」
「あ……ええと……お、桜源郷?」
「んなもんあるかい」
「ま、なんでもええやん!!綺麗やったんには変わりないんやもん」
口の中で小さく口ずさむ歌は。
丸竹夷に……。
「早よ、桜の季節にならへんかなあ……」
「紅葉狩りに行くんとちゃうんかお前は」
「え、平次、行ってくれんの?」
「まだ考え中や」
「ええーー。ええやん、行こ。天気もええんやし」
二人のやり取りに目を細めて静華は音も無く立ち上がる。
「ほな、うちは出かけるから」
「おう。気ぃつけぇや」
「あんたも、バイクで行くんやったら気ぃつけるんやで?あと、戸締り忘れんとってな」
「まだ出かけるか決めてへんって」
「ほな和葉ちゃん。この子が道交法破って線路バイクで走ったりせぇへんようにようく見張っといてな」
「うん。おばちゃん。いってらっしゃい」
襖が静かに閉められる。
「なー」
「あー?」
「紅葉狩り。ええやん。行こ」
「んー」
片手で例のスナップを弄びつつ、片手で焼きたてのサツマイモを口に運ぶ。和葉も一つ手に取って、指の接地面をなるべく小さくしつつ丁寧に皮を剥いている。
「桜、か」
「お花見ちゃう。そりゃ、桜見たいけど……こんな季節やもん。せやから紅葉狩り。あかん?」
「桜、なあ……」
「平次?どないしたん?目の焦点合うてへんよ?」
「ん?ああ」
自分とスナップの間で振られた手に顔を上げる。
「どないしたん?ぼーーっとして。ボケるには早すぎやで?」
「いや……。ちょっと、な」
再びスナップに視線を移す。軽口に何も反応が無いので、不審に思った和葉が平次の顔を覗きこむ。
「ちょっと?なに?」
「んー?まあ、あれや。こんだけめかしとって……」
綺麗な着物だ。和葉に、よく似合っている。
「そんで、桜の舞い散る中におったら。そら綺麗やったやろな、思てな……」
「平次?」
和葉の声が一オクターブくらい低くなったかと思うと、額にその掌の感触。
「……熱は無いみたいやけど。どないしたん?平次。脳味噌溶けてもうたん?」
「喧嘩売っとんのか、こら」
「せやかて……平次がそんなん言うなん、アタシ初めて聞いたもん。あかんわ。今日は昼から台風来るかもしれへん。天変地異の前触れや!!」
「よし。決めた」
勢いよく立ち上がる平次を、大きな瞳を見開いて和葉が見上げる。
「行くで」
「え、どこ?」
「紅葉狩り、行きたいんやろ?」
「あ、うん。行く」
「カメラ忘れんなや」
「うん。持ってる」
「……準備万端やなあ」
「そんなん、アタシは最初から行く気やったもん」
「さよか。ほな、準備するからもう少しここで芋食っとけ」
「うん」
居間に和葉を一人残して。平次はバイクの準備に一人立ちあがった。
***
最初、京都かと思った。が、綺麗に色づいた銀杏の町並みを抜けてバイクはドンドン北へ向かう。両側の歩道沿いに植えられた銀杏の葉が風に舞い散る。
「平次?」
「あ?」
「どこまで行くん?」
「黙ってついて来い」
ついて来いもナニも、バイクの後ろに乗せられて遅れようも無い。
京都の街は、すっかり秋の彩り。
北へ向かうバイクに。ふと記憶が蘇る。
鞍馬山。
あの日。敵の手に落ちた自分を助けに来てくれた平次。
泣きたいくらいに申し分けなくて、泣きたいくらいに情けなくて。
泣きたいくらい嬉しかった。
だから。初恋なんて関係無い。そう自分を何度も思い聞かせたものの。
きゅっと両手に力を篭めて、その背に頬を寄せる。
あの日以来、和葉はあの水晶を見たことが無い。多分、平次は持っていない。なくしたのでなけば、返したのだろう。
……その、初恋の女性に。
千賀鈴さんではないと平次は繰り返す。多分、嘘ではないのだろうとは思うが。
それならそれで。いったいどこの誰だったのか気になる。いっそ千賀鈴さんだと言われた方が気が楽だ。
気にしないようにと何度も繰り返したところで。
平次の、アホ。
あれから季節は移ろい、夏が過ぎて秋が訪れ。
いつもと変わらない、いつも傍にいてくれる幼馴染。重ねる日々が、きっと初恋の思い出よりももっと色鮮やかに、確かに残ると信じているから。
でも。
ふと、思う。
あの日。着物を着せてもらって綺麗におめかししてもらった自分。
結局平次には見てもらえなかったけれど。
もし。
もしも。
あの日の自分が平次に会えたならば。
……平次、アタシのこと好きになってくれたかな。
***
混んだ駐車場のバイクスペースに漸くバイクが停まった。和葉はメットを取ると軽く頭を振って額に張り付いた前髪を払う。
「結構、混んでるんやね」
「せやなあ。有名らしいし、ここの紅葉。観光バスもおんなあ」
「ホンマや」
「もっと穴場っぽいとこのがゆっくりできたかも知れへんなあ」
「そんなん、別にエエよ。人がおっても紅葉は紅葉やし」
「まあな」
「せやけど、ここ、どこなん?お寺?」
「せや。金剛輪寺。滋賀県やな」
「滋賀県!?」
どおりで時間がかかったわけだ。途中何度かコンビニで休んだものの、運転している平次の方が余ほど疲れただろう。
荷物を肩に掛けて歩き出す平次の後を慌てて追う。
「なんでわざわざここまで?紅葉で有名なん、もっと近くにもあんのに」
「なんや。疲れたか」
「あ、アタシは平気やけど。平次、大変やったんちゃうん?ここまで来たん、なんか意味あんの?」
「まあ、色々やな。地蔵がぎょうさんあるらしいで」
「地蔵?平次、お地蔵さんなん見たかったん?」
「あとなあ、本堂の紅葉がそら紅くてなあ。『血染めの紅葉』言うて有名らしいわ」
「血染め!?」
「そんで本堂の仏像が、やな。木ぃで出来てんのやけど、彫ってる時に血ぃ出て来たっちう話や」
「血!?ちょう、平次。もしかして事件のついでとか言うん?」
「なんでやねん」
「せやかて、血染めとか、血ぃの出る仏像とか」
「アホか。別に事件なん関係無いわ。仏像から血ぃ出た言うんは伝承や。仏さんの魂が宿った言われてるだけやで」
「ふうん」
近くを歩くカップルの男の方がガイドブックを片手に同じようなことを説明するのが遠く耳に届く。
こういう薀蓄を当たり前のことのように話す時、この幼馴染の好奇心と記憶力の凄さを実感すると共に。
……やっぱ平次、カッコいいな。
ちょっと自慢げに感じたり。
「紅葉、綺麗……」
「ホンマ、今が見頃やな」
「あっちもこっちも真っ赤。赤いトンネルや」
参道の楓は随分と大きく、枝を道に張り出している。
あちこちに立ち止まって写真を取る観光客がいるが、幼馴染は普段より心持ゆっくり歩いてはいるものの止まる気配は無い。足が止まりそうになって距離が開く度に和葉は慌てて後を追う。
紅。紅。紅。今にも燃え出しそうな紅。今にも燃え尽きそうな紅。
幻想的で儚くて。それでいてどこか力強い。
やがて着いた本堂の楓は名にし負う紅。思わず息を飲む。
「血染めの紅葉」
その名に違わぬ紅は、どこか切ない。何かを思い出すと思ったら、一面の彼岸花だった。綺麗で、繊細で、どこか切ない。
が。頻りに感動する和葉に対して平次は落ちつかない。写真を何枚か撮って和葉の気が済んだ様子を読み取るとさっさと歩き出してしまった。
「平次?」
「あん?」
「平次は、何見に来たん?」
「紅葉狩り言うたら、紅葉やろ」
「せやけど、ちゃんと見た?ホンマに血ぃみたいに紅かったん」
「ん、見た見た。んーーと、こっちやな」
「……」
注意深くその横顔を窺う。平次の興味が他にあることくらい、長い付き合いでわかる。紅葉を楽しいんでいないわけではない。だけど。
その心は、もっと別のもので占められている。
……やっぱ、事件?
……それとも。
嫌な予感に手の中のカメラを握りしめる。
まさか……。初恋、の?
まさか。
あの春の日以来、平次が初恋の女性を探している気配は無い。水晶を返してしまったと言うことはもう出会えたということだと思うし、でもあれ以来連絡を取っている風も無くて。正直和葉としては安堵していたのだが。
まさか。ここで待ち合わせ?でもそれやったらアタシなん誘わへんと思うし……でも平次、何考えてるかわからんとこあるし……。
思わず視線が下がったところで、前を歩く平次が急に止まり。和葉はその背に突っ込んだ。
「ご、ごめん、平次。アタシちょう、ボーっとしてて……」
「これや」
「え、これって?」
幼馴染の視線の先を追おうとすると、ポンと軽く一つ頭を叩かれた。
「お前、ちょう、ここにおれや」
「え、平次!?」
置いて行かれるのかと延ばした手からデジカメを奪い取ると、ホンの数メートル先で平次が振り返った。
とりあえず、どこかへ行ってしまう気配はなかったので、和葉は改めて自分の背後を振り返り。
……え?
その木には、小さな花が、いくつも。いくつも。いくつも。いくつも。
これ……。
桃、ではない。梅でもありえない。そもそも、この寒空の下でこんな花を見れるとは。
小さな、薄桃色の花。薄桃色と言うより、寧ろ。
「これ……桜……?」
寧ろ、桜色。
燃え出さんばかりの紅葉に囲まれて、今にも消えてしまいそうな桜の木。
でも、なんで?今頃咲いてんの……?
ファインダー越しに和葉と桜を確認してもう一度平次が和葉の傍に戻ってきた。
「やっぱなんや、ちょう違うけど、ま、ええか」
「平次、これ、桜?なんで?もうすぐ冬なんに……」
「やっぱ染井吉野や枝垂桜みたいにはいかへんか。ま、この時期やしこんなもんやろ」
「なあ、これ、桜やろ?」
「せや、冬桜。やっぱちょう、春に比べると地味やなあ」
「地味、だけど」
鮮やかに激しく、それでいて切ない紅に囲まれて。桜は本当に儚く物憂げで。
消えそうに美しい。
あの日の桜と比べると確かに地味かもしれないが、違う美しさに満ちていて。心を打つ桜の木。
「写真撮ったるから、お前ここにおれよ」
「え、別にアタシはええよ。桜、撮ったらええやん」
「ちょうじっとしとけ」
いきなり伸びてきた手に前髪を直されて戸惑う。他の誰でもなく、平次に。
……やっぱ熱でもあるん?
思わず喉まで出かかった言葉を飲み込む。でも、だって。
驚いて固まってる間に平次はもう一度和葉と距離を取る。
「行くで」
行くで、と言われても。一人で写真を撮られるのはなんだか気恥ずかしい。
だって。なんだか。
……もの凄くカップルっぽいと思ってしまうんは、アタシだけ?
事実周囲には彼氏にシャッターを押して貰う二人連れが多い。意識しなければ。和葉が意識しなければ別に幼馴染に写真を撮ってもらうのは別段不自然なことではないのだろうが。それはわかるのだが。
それでも。
「和葉。どっち見てんねん。こっちや」
「あ、うん。ええと」
ファインダーを覗く平次に笑顔を向けることも出来ず。どこか不自然な表情になってしまう。
気にしたら、あかんって。
ホンの一瞬カメラから顔を上げて和葉の様子を窺って。
「行くで」
二三回、シャッターが押され、首を捻りつつ平次が和葉に寄る。
「なんや、変な顔して」
「顔が変なんは元々やもん」
「そんならせめて笑うくらいできへんのか、お前は」
「わ、笑ったもん」
「引きつっとったで?いっつもアホみたいに笑てるくせに」
「アホってなによ!!」
食って掛かる和葉の額を片手で軽く抑えて。
「ほな、行くか」
「え」
「早めに出ぇへんと帰るんが遅なんで。今日はてっちりやておかんが言うてたからな。もう、ええやろ」
「あ、うん」
広い金剛臨時の庭。まだ半分も見れてはいない。確かに十分に堪能したし足りないとは言わないけれど、まだあるなら、まだ見たい。
が、平次はさっさと踵を返して歩き出す。
「平次、どないしたん?」
「ん?なんでや?」
「……怒ってんの?」
「なにをや」
「……別に、なんもないけど。急に帰ろうなん言いだすから」
「ま、なんでもええやん」
「平次、もしかして桜見に来たん?」
「お前が紅葉狩りしたい言うたり桜見たい言うたりするからや。両方に応えたったんに、あかんかったんか?」
「あかんく、ないけど」
寧ろ紅葉より。桜に心動かされていたような気がするのは、気のせいなのだろうか?
***
机と椅子の間に距離をおいて足を組み、片手でコーヒーを飲みつつ、片手でマウスを操作する。
一つ一つ小窓のプレビューを確認し、目的の写真を見つけるとクリックした。
ディスプレイには桜の木と、和葉。と、紅葉。
燃えんばかりの紅葉の中で、寧ろ桜ばかりか和葉まで消えてしまいそうに所在無気している。
冬桜も、綺麗ではあったが。
……やっぱ、春まで待てってことか。
別に。こだわる事も無いと思った春の日。けれど夏が過ぎ秋が近づくにつれ、ふと思いついたこと。
今度こそ。桜の木の下であの少女に。初恋の少女に会おう。と。
春になったら和葉をつれて京都へ行こう。京都なら電車でも充分だし、電車なら和葉に着物を着せることも可能だろう。
桜が咲くまであと三ヶ月と、ちょっと。
焦る必要も、なかった、な。
今日の桜もそれなりに綺麗だった。前哨戦としては充分。けれど、仕切り直すならやっぱりあの山王寺のあの桜だ。
あの桜が咲いたら今度こそ。
写真を全部自分のパソコンにダウンロードして。
桜の写真を抜いて、CD-ROMに焼く。
和葉は、気付くだろう。文句を言われるのは明白。
ま、ボケとったとか言っとけばええやろ。
ウィンと音を上げて、パソコンがせわしなく動き始めた。
窓の外の桜はすっかり冬景色。冷たい風に細い枝がしなる。が、冬が過ぎれば春はもう目の前だ。
春になったら。今度こそ。
すみません。映画DVD発売を目の前にして待ちきれなかったのは平次より寧ろ私です。桜〜〜桜〜〜〜。
つか、あれです。自分、金剛臨寺行ったことないんで……。でも冬桜あるらしいんで……。うう。ごめんなさい。行きたいよう(T_T)取材旅行?(笑)
群馬県の桜山公園と言う所の冬桜は1000本以上あってすっごい綺麗みたいですけど。関西で冬桜がある場所がわからなくて。
実は本数もちゃんと分かってないんですけど、多分、一本二本って感じに……写真では見えたので……。
……関西のお寺or公園で冬桜がたくさんあるとかいうオリジナル設定作った方がいっそましだったかー。そうなのかー。そうかもー<今更
平次が。また別人化してますが映画で桜見ながら夢見がちだった平次を思えばそれ程別人でもないかと(笑)
つか、最初はもっとたくさんたくさんらしからぬことをしてたのですが、余りの別人っぷりにガスッと削除しました切腹。
いや、なんつか、なんでしょうね?
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