大好きだから。
側に居たい。一緒に居たい。同じ空間で同じ空気を吸って、触れ合うほどにそばに居たい。
大切だから。
危険な目にあわせたくない。何があっても守りたい。苦しむ姿は見たくない。
どちらも、正直すぎるほど正直な気持ちなのに。
それが両立しない時。どうしたらいい?
どうすればいい?
***
ホテルのフロントに預けられたパソコンと手紙。他には何もなかった。
これは、二つのことを意味している。
一つは。服部が今後の事件解決を俺に丸投げして来たってこと。
二つは。服部が俺と俺の探偵能力を信頼してるってこと。
まず、毛利探偵事務所にかかって来た電話。「江戸川コナン」宛てのパソコンと手紙。
俺を引っ張り出そうとしたことは、明白。まあ、どちらが言い出したか知らないけれど、もともとランチバイキングに俺らを誘いに来た段階で服部は俺を巻き込む腹だったんだろうが。
いや。
犯人の誘いに乗って米花市に来た段階で、そのつもりだったんだろうけど。
そして。
パソコンと手紙以外に何もない、ということは、「お前ならこれで何とかなるやろ」という服部の(一方的な)信頼だと思って間違いない。
バーカ。俺には関係ねぇよ。自分のことだろ?人に頼らず自分でどうにかしろよ。
……そう言うこともできるわけだが。
あのヤロウ。俺がそんなこと言えない事を百も承知でいやがる。
他人に心を見透かされるのは好きじゃない。
確かに俺は、相手が誰であれ人一人簡単に見捨てられるほど人間強くない。それくらいわかってるし、それが見透かされてる分には問題ない。
だが。服部が言いたいのは、そんなことじゃない。
「お前には俺を見捨てられへん。そうやろ?」
複雑な表情で、それでも確信もってそう言う姿が容易に想像できて、むかつく。
むかつくが……ああそうさ。畜生。俺には服部を見捨てることなど出来るわけがない。
服部は友人だ。気の合う友人だ。それだけでも助け出すに値する。だけど、それだけじゃない。
あいつと俺は良く似ている。いや、性格は全然違う。推理の仕方も全然違う。
だけど、似ている。共通点が多い。主に……その環境に。父と、自分自身と。そして、幼馴染。
服部が大阪府警本部長の平蔵氏と一緒に居るのをみると、俺はどうしたって父さんを思い出す。父さんと自分を思い出す。
服部が関西で事件を解決したという知らせを聞くと、どうしたって高校生探偵として活躍していた自分を思い出す。
そして。服部が遠山さんといる姿を見ると。そう……どうしたって俺は、自分と蘭を思わずにいられない。
服部と遠山さんの関係と、俺と蘭の関係は、同じ「幼馴染」で括られるにしろ少し違う。違うが。どうしたって重なる。
狙われているのが俺なら?浚われたのが蘭なら?
畜生!!
どうしたってダブる。犯人に翻弄され、まさか蘭が狙われることはないと油断し、そして蘭の命を危険に晒したあの事件。
開かない扉の向うで、自分の無力さを痛感した、あの事件を。
「すまんけど、後のことは頼むわ」
そう小さく笑う、服部の姿が容易に目に浮かぶ。それは、俺の姿だ。
俺なら何ができた?その少ない時間で。何も出来ない。だから、何も出来ない無念が、服部の気持ちがよくわかる。
わかるから。
俺は、服部を見捨てられない。
「できたわよ」
灰原の声に我に返る。一度死んだパソコンシステムの復旧を頼んでおいた。
「なあに?死にそうな顔してるわよ。そんなにあの大阪のお友達が大事なの?」
「当たりめぇだろ?友達なんだから」
口の端に、嫌な笑みが浮かぶ。
「貴方なら、そう言うと思ったわ」
……他人に心を見透かされるのは、好きじゃない。
***
「どないしよう!!平次が殺されてまう!!」
「大丈夫だよ!!和葉姉ちゃん、大丈夫だから……」
急いで警察に連絡をする。動揺している彼女を、歩いて連れて帰るのは無理そうだ。パトカーを一台回してもらうよう頼んだ。
「すぐに警察の人がきてくれるから、大丈夫だよ、和葉姉ちゃん」
「う、うん……ありがとな、コナン君」
「大丈夫?和葉姉ちゃん」
「う、うん。大丈夫やで、ごめんな、コナン君。心配かけてもうて」
そう言うと遠山さんは笑った。無理をしているのがわかって、俺は胸が痛んだ。
「せやけど、なんでコナン君、アタシがここに居るってわかったん?」
「あ、ええと……それは……平次兄ちゃんが、フロントに伝言を残しておいてくれたんだよ」
「アホやなあ、平次。それやったら……さっさと警察に連絡したらええのんに」
「でも、それじゃあ……」
縛られたままの遠山さんの両手の縄を解く。何をどう縛ったのか、なかなか解けない。
「警察に通報したら、犯人が怒って和葉姉ちゃんが危険な目にあうかもしれないでしょ」
「アホやなあ、平次は」
ポツリ、と呟く。
「アタシのことなん気にせぇへんと、犯人逮捕したらよかったんに」
そんなこと、服部が出来るはずがない。何よりもまず、犯人逮捕より自分の身の安全よりまず、遠山さんの安全を考えた。その気持ちが痛いくらいに良く分かる。
俺だったら。やはり何よりもまず蘭の安全を考える。同じだ。
「はい、和葉姉ちゃん。解けたよ」
「ありがとな、コナン君」
「立てる?」
「ん。大丈夫やで」
ヨイショ、と小さく声を掛けて、遠山さんが立ち上がる。立ち上がりきらないうちにまた膝を着いた。
「あれ?」
「どうしたの!!??和葉姉ちゃん。大丈夫?」
「だ、大丈夫や……なんや、まだ頭がくらくらして……ゴメンな、コナン君。すぐ治るから」
「もうすぐ警察がきてくれるから。動かない方がいいよ」
「ん。ありがと」
小さく笑うと両手を胸の前できゅっと握り締める。祈るような姿。事実、祈ってるのだろう。服部の、無事を。
肩が小刻みに震えていた。
いいよな、今くらい。どうせ今の俺はコナンだし。許せよ、服部。許してくれよ、蘭。
「はい」
「なに?コナン君」
「警察が来るまで、手ぇつないでようよ」
「え?」
「ボクが一緒に居るから、もう怖くないよ」
「コナン君……」
差し出した俺の小さな手を握る。その手の冷たさに、俺の方がビクリとした。まだ、震えている。
「ホンマに、コナン君て、変な子やね」
「え?」
遠山さんが苦笑する。
「蘭ちゃんが、よく言ってたんや。コナン君、色々気ぃ回って、ホンマ時々大人みたいやって……」
「そ、そうかな」
「そうや。アタシの方が励まされてるもん」
「え、ええと……ほら、ボク、怖がりだから……。怖い時、誰かの手を握ってると、安心するでしょ?」
「せやけど……でも、そういうところ気がつくんが、大人みたいなんよ。多分、平次なん、気付かへんで?」
それは。同意したい所だが、したら殺される気がする。ホントは、今遠山さんに手を差し伸べたいのは服部なのだ。今の俺は、服部の代わり。
「蘭ちゃん、言うてたわ。そういうところが、工藤君にそっくりやって」
「え?」
「コナン君……工藤君がおらん時に蘭ちゃんが怖がっとったら、工藤君の代わりに手ぇ繋いであげるんやで」
「う、うん……」
蘭……。
この手は。このコナンの手は。今は服部の代わり。そして、蘭に対しては、新一の代わり。
遠くでパトカーのサイレンの音が聞こえたかと思ったらあっという間に埠頭に二台のパトカーが相次いで滑り込む。
「大丈夫かね!!??」
目暮警部が飛び出してきた。
「うん……和葉姉ちゃんは、まだ少し薬が効いてるみたいなんだ。でも、平次兄ちゃんが……」
「一体何があったのか、詳しく話してもらえるかね」
「はい」
佐藤刑事に肩を借りて立ち上がった遠山さんが気丈に答える。
「では署まで……」
「毛利探偵事務所の方がいいと思うよ」
「え?コナン君、しかし……」
「その方が、蘭姉ちゃんもいるし、和葉姉ちゃんもきっと落ち着いて色々話せると思うんだ」
「なるほど。確かにそうだ。佐藤君、彼女を毛利探偵事務所へ」
「はい」
***
まさか。こういう展開は考えてなかった。
事件は誰もが想像していなかった方向へ転んだ。こんなことは、俺も考えていなかったし、恐らく服部も考えていなかったろう。
大阪の、服部の両親もさぞかし驚いたに違いない。
一億円の身代金要求。犯人の目的は服部に対する復讐だ。殺人予告とも取れる謎の手紙を出していながら平然と身代金を要求して来た。どういうことだ?
が、誰の顔にも安堵の色が浮かんだ。遠山さんにも、蘭にも。目暮警部でさえ。身代金を払えば、服部は無事に戻ってくる。誰もが、そう思っていた。
探偵事務所や、大阪に届いたあの手紙は悪戯に過ぎなかったと。
俺には……とてもこれで済むとは思えなかった。思えなかったが……蘭や、遠山さんには何も言えなかった。
俺自身、望んでいたのかもしれない。これで、無事に服部が解放されることを。
もう、消沈する遠山さんを、彼女を一生懸命に元気付ける蘭を見ているのは嫌だった。
畜生!!なんでもいいから早く戻って来いよ!!服部!!
今まで服部の隣にいる遠山さんしか見たことが無かった。だから、笑っていたり怒っていたり拗ねていたり。いつもどこか幸せそうだったのに。
俺が、「新一」が蘭の隣にいてやれれば。蘭にあんな風に笑わせてやれるのかと、そう思っていたのに。
今の遠山さんは、蘭だ。
「新一」が蘭の前から去って。「コナン」として側にいるから見れた。見れてしまった、蘭だ。
切ないほどに苦しいほどに泣きそうなほどに幼馴染の身を案じて。それでも気丈に笑ってみせる。
畜生!!畜生、畜生、畜生!!
容疑者は二人に絞られた。米花ホテルの遠山さんの部屋に落ちていた紙ふぶき。それが容疑者を絞り込む手がかりになった。
あと二人。何か。何かあるはずだ。容疑者を絞り込むための、何かが。
奴らのうちどちらかが、遠山さんを攫い、そして今服部を捕らえている犯人なのだ。
「じゃ、俺は米花駅に行って来るから」
おっちゃんの声に我に返る。時計を見るとまもなく7時半。身代金が揃うまであと30分。
「何があるかわからんからな。おめぇらはここから動くんじゃねぇぞ」
「うん。わかった。お父さん、気をつけてね」
「俺はただの身代金受渡し役だ。大丈夫だよ」
「おっちゃん……平次を……」
「おう。任せとけ。ここでちゃんと待ってるんだぞ」
「よろしく……お願いします……」
扉が閉まる。
遠山さんと蘭はTVを見ながら何か話している。なるべく気を紛らわすつもりなのだろう。犯人の指定した時刻まで、まだまだ時間がある。
俺は、二人に気付かれないようにそっと探偵事務所を出て三階の毛利家へ上がった。スケボーを抱えて階段を駆け下りる。
おっちゃんや警察には任せておけない。何よりこれは、俺が服部から頼まれた……依頼だ。
「コナン君」
「!!」
細く探偵事務所の扉が開かれ、蘭の姿が見えた。
「……蘭姉ちゃん……」
「何処に行くの?コナン君」
「え、ええと……」
言葉を捜す。正直に言った所で止められるのが、オチだ。
「ええと……元太…達と……」
「服部君を、助けに行くの?」
「あ……」
蘭はしゃがんで、俺の肩に手をかけた。
「違うの?」
「う、うん……」
嘘が、つけなくなる。
「だって……だって、ボク……平次兄ちゃんが心配で……」
「……新一?」
「え!!??」
蘭の瞳は、じっと俺を見て離さない。
「新一から、連絡があったんじゃない?コナン君に」
「ち、違……」
「だって、電話で服部君が工藤、って言ってた。服部君、新一にも連絡したんじゃない?それなら、新一がこんなこと見過ごすとは思えない」
「う、うん……」
俺の方が先に蘭から視線を外す。
「丁度電話があったから……ボク……」
「新一、なんて言ってた?」
「まだ手がかりが少なすぎるから……身代金受渡しの様子を教えてくれって……きっと、子供のボクならウロウロしてても犯人も油断するからって……」
「全く……コナン君に捜査頼むなんて……自分が帰ってくればいいのにね」
「今ちょっと遠くにいて……すぐにはこれないからって……」
「でも」
蘭の暖かい手が頬に触れた。もう一度視線を蘭に捕らえられる。
「気をつけてね、コナン君」
「う、うん」
「服部君、早く助けてあげてね。きっと……コナン君なら出来るよ。そんな、気がするの」
「蘭姉ちゃん……」
「でも、無茶はだめだからね。約束」
「うん……」
「早く……」
静かに微笑む。
「私、早く和葉ちゃんの笑顔、見たいから……」
「蘭……ねえ……」
その瞳から涙が零れる。
「もう、あんな和葉ちゃん、見てられないよ……私……」
「だ、大丈夫だよ!!」
頬にあった手が、ピクリと反応する。
「俺が……俺が必ず服部を助け出してやるから!!すぐに、遠山さんを服部に会わせてやるから!!心配するな!!」
「コナン君……」
「……って、新一兄ちゃんが……」
「そう……」
そっと自分の涙を拭って。
「じゃあ、私も頑張らなきゃね」
「あ……」
「服部君が戻ってくるまで、私が和葉ちゃんの側にいてあげるから。私も頑張るから。だから、もし新一から連絡があったら、そう伝えておいて」
「蘭姉ちゃん……」
「私には、電話要らないからって。だって、今新一から電話があったら……和葉ちゃん辛いでしょ?」
「ら、蘭!!」
立ち上がりかけた蘭が止まる。
「だ、大丈夫だから。服部はすぐに助ける!!もう、遠山さんも、蘭も。泣く必要なんか無いから!!大丈夫だから!!」
「コナン君……」
「……って、新一兄ちゃんが……」
蘭がもう一度座り、膝を突いた。ふわりと両手が伸びてきて。
抱き締められた。
「……お見通し、ってことか……」
「蘭……」
「気をつけてね、コナン君」
「う、うん……」
「……待ってるから」
「ら……」
「私、待ってるから。服部君のことも……新一のことも」
「……」
そっと俺を放して蘭が立ち上がる。一瞬、動けなくなる。
「泣いてないわよ、ばーか」
「え?」
見上げると、そこに蘭の笑顔があった。……無理してるのが、手に取るように分かる、笑顔が。
「って、新一から電話があったら言っておいて」
「蘭姉ちゃん……」
「じゃ、行ってらっしゃい。ホントに、無茶だけはダメよ?服部君が無事でも、コナン君に何かあったら意味ないでしょ?」
「う、うん」
「コナン君は、私や和葉ちゃんを泣かせるようなこと、しないよね?」
「うん……」
扉の向うに蘭の姿が消える。無理に作った笑顔を残して。
俺は大きく一つ、深呼吸した。スケボーを抱えなおして、階段を駆け下りる。
畜生!!服部!!待ってろよ!!
***
「ホンマ、今回はすまんかったな」
服部とゆっくり話せたのは、病院の廊下でだった。
犯人逮捕、程なくして救急車が到着し、脳震盪を起こして意識が戻らない蘭と足を骨折した服部は無理矢理同じ救急車で病院に運ばれた。
当然、俺と遠山さんも同乗した。
今、蘭がMRIなどの検査を受けている。服部は先に治療も終わり、ギプスつきの足で蘭を廊下で待つ俺に付き合っていた。
隣の遠山さんは余程疲れたのだろう。緊張の糸が切れたのか、服部の肩に頭を預けてすっかり寝てしまっている。
「別に、まあいいよ。お互い様だしな」
「すまんが、貸しにしといたってくれや」
「ああ。この貸しは、ちゃんと返してもらうぜ?」
「そらもう」
服部の僅かな動きで肩にあった遠山さんの頭が少し前に傾いだ。服部がその額を軽く押して肩に乗せなおしてやる。
「せやけど、ホンマすまんかったな。あの姉ちゃんまで、こないな目ぇにあわせるつもりはなかったんやけどな」
「まあ、蘭は……俺も迂闊だったよ。まさか、蘭たちが倉庫まで来るとはな」
「こいつも……ホンマ、無茶しよって」
「ばぁか。何言ってんだよ。散々心配かけたんだぜ?ちゃんと後で、謝っておくんだな」
「……ああ」
珍しく素直に応える服部に、つい苦笑する。いつもの奴ならなんらかの憎まれ口が返ってきているところだろう。
「せやけど、ホンマ助かったで、工藤」
「もういいって」
「ホンマ、お前が俺のこと見捨てたら、どないしよう思て心配しとったんや。お前、結構薄情やしなあ」
「え……」
思わず顔を上げて服部の顔をまじまじと見る。
「ま、俺とお前は親友やしなあ。工藤の友情に感謝感謝や」
「な、何言ってんだよ。誰と誰が親友だって?」
「俺とお前や。同じ探偵同士。せやろ?」
「探偵は認めるけど……いつから親友なんだよ」
「出会った時からや」
「ばぁか。誰が親友だよ。勝手に言ってろ」
「へぇ。強気やなあ。なんならあの姉ちゃんに喋ってもええんやで?コナン君のひみつ」
「……親友とか言いながら脅してんじゃねぇよ」
大体。
服部を助けた理由は、勿論友人だからだが。それだけじゃない。それだけじゃなくて……。
まさか……そう思ったのは、俺だけなのか?俺の深読みだったのか?
服部はそこまで考えて……いなかった?
「お前……ホントに俺が友情だけで助けに行ったとでも思ってるのかよ」
「当たり前やろ?」
服部が、俺から視線を外して小さく笑う。漏れた声は、幾分トーンが低かった。
「他に、なにがあんねん」
ああ。そういうことか。
俺が蘭を想うように、服部は遠山さんを想っている。それは、俺たちにとって大切な想いだ。
それを。利用したなんてことは。利用されたなんてことは。お互いなかったことにした方がいい。
「……ったく」
相変わらず。こいつは直球勝負のようで、たまにもの凄い変化球を投げてくる。
「しょうがねぇから、そういうことにしといてやるよ」
「なんのことかなー。コナンくーーーーーん」
「……お前なぁ……」
俺が思わず右足のシューズに手を伸ばしかけた時。
「あ」
検査室の扉が開き、看護師に付き添われて蘭が出てきた。額に包帯を巻き、ストレッチャーに寝かされたまま。
俺は慌てて看護師に走り寄る。
「あの」
「ああ、大丈夫よ。脳波に異常はなかったから。さっき意識も戻ったわ。今は……眠ってるけど……。今日は入院して様子を見るから。……ご家族の方は?」
「あ、多分、下の待合室で……タバコを……。あと、ボク……」
「弟さん?じゃあ、一緒にいらっしゃい」
立ち上がりかける服部を目線で止める。
「ばぁか。今動いたら、起きちまうぜ」
「せやけど」
「……邪魔する気か?」
「……めっそうもございません」
軽くてをあげて、降参のポーズをとって見せる。
「こっちも邪魔しねぇからよ」
「アホ、何言うとんのや!!それより、おっさんへの連絡は30分後でええか〜」
「ばぁか」
動き始めたストレッチャーについて行きかけて、振り返った。
「俺が自分でするから、余計なことすんじゃねぇよ」
「……了解」
というわけで、コ蘭。誰がなんと言おうと、コ蘭。……辛かったと思うんですよねー。コナンくんも蘭ちゃんも。この事件では。
いや、当事者である平和も当然辛かったと思うんですけど、見てるほうも辛かっただろうと。特に自分では何も出来ない蘭ちゃんが。萌え<萌えるな!!
その辺が書きたかったのですが……いろいろ詰め込んだ結果また散漫な結果に。でもラストのコナン&平次はお気に入りなのです。
埠頭シーンの、切ないコナンもお気に入りなのです。和葉に対しては当たり前としても、大事な蘭にとっても代役でしかない自分。みたいな。
そういうのに萌えてしまうのです。
←戻る