部活後大滝に呼び出されて殺人未遂事件を一つ解いた。
府警本部はこのところ、先日起きた現金輸送車強盗事件の捜査に人手をとられている。
陣頭指揮をとっているのは平蔵と遠山父だが、残念ながら平次に声がかかることはない。いつかこんな大事件の時に父から声がかかれば、と思うものの自分が未熟なことくらい知っている。
平次としても、とりあえず父親の邪魔をするつもりはなかったので、その分、謹んで他の事件に首を突っ込んだ。
昨日は強盗事件で一昨日は殺人事件だった。学業と部活も疎かにはできない。流石に疲れた。
大滝のパトカーの助手席でぐったり脱力する。
不意に携帯電話が鳴った。
「もしもし」
「あ、あの……私、寝屋川郵便局の津本というもんやけど……服部平次君……ですか」
「おお、津本ハン。俺や俺や」
津本とは、一ヶ月ほど前の郵便強盗狂言事件の際に知り合った。あの事件は無事に解決したはずだが、何かあったらと携帯番号を教えておいた。
「なんや、あの事件のことでなんかあったんか?」
「いえ、今度は違うんやけど……変な手紙が、寝屋川郵便局にぎょうさん来とりますんや……」
「変な手紙?」
「はあ……。変、ちうほどのもんでもないかも知らんので、警察に言うても相手にされんかと思たんで平次君に電話さしてもろたんですわ……」
白い、封筒だという。差出人は不明。消印は米花市郵便局。宛先は寝屋川市内の約100人で一見、関連性はない。
ダイレクトメールの類なら珍しいことではない。しかし差出人はないし封筒に広告もない。ただ白い封筒。無機質なパソコンで印字された宛先。
今日の最終便で寝屋川郵便局に届いた。明日の午前中に配達になるのだが、どうにも気になって電話をかけてきたらしい。
「んー。せやけどそんだけじゃあ、なんや事件や言うんは難しいなあ」
「はあ。それはまあ、そうなんやけど……この話をなんとのう、配達をやっとります仲間に話したんですわ」
帰宅途中、偶然一緒になった配達員になんとなく話したところ、同じような封筒を数通、今日の午後に配達したという。
「そん中に、うちがあったんか」
「はあ。勿論記憶違いかも知れへんし、そもそも今郵便局にある100通とホンマに一緒なんかもわかりまへん。せやけど、そいつが言うには白い封筒を二通、そのう、平蔵さんと平次君宛に届けたいうんですわ。平次君とこは有名ですさかい。そいつも覚えてる、言うんですわ」
「白い封筒なあ……。すまんな、津本さん。俺、今帰宅途中やねん。まだ郵便受け見てへんのや」
「あ、そ、それは失礼を……」
「いや、ええで、ええで。ほんなら、家帰ったら見てみるわ。その白い封筒、なんや不審やったら俺から警察に届けたるわ」
「よろしたのみますわ。ホンマ、なんもないかも知れへんので……」
「ん、了解や。わざわざすまんな」
電話を切る。ほぼ同時にパトカーが停まる
「平ちゃん、つきましたで」
「あー。おおきに……」
「事件、ですか?」
「んー。まだ事件かどうかはさっぱりやなあ。ま、なんかあったら、必ず府警に電話するわ」
服部家には明かりがついていない。母、静華はどうやら府警本部に行っているのだろう。
「毎度、すまんですな。平ちゃん。お陰で助かりましたわ」
「いや、こっちこそ経験積ましてもろて。おおきに。大滝ハンも、まだ仕事やろ。頑張ってな」
パトカーを降りて一つ、大きく伸びをする。
郵便受けには夕刊と。そしていくつかの郵便物。ダイレクトメールの類が多いが、その中に妙に白さの際立つ封筒二通を発見する。
「これか」
玄関を入り、一見乱暴に、しかしきちんと揃えた状態で靴を脱ぐ。
「あ、やば」
うっかり平蔵宛を開けてしまった。まあ、どちらも同じかもしれない。あまり気にせず中の葉書を取り出す。
瞬間、電話が鳴った。
「もしもし。服部やけど」
「なんや。まだ生きとったか」
「はあ?」
常日頃からあんまりな父親だが、それにしたってこの第一声はあんまりだ。
今日の事件も別に大立ち回りがあったわけでも、ありそうなものでもなかった。何を根拠にこの第一声なのか。
「俺はピンピンしとるけど?なんや、なんかあったんか」
「白い封筒、見んかったか?」
「白い封筒?今、オヤジ宛の中見るところや。……ってなんやこれ。殺人予告、ちうことか?」
「同じもんが府警にも届いた。日付が明後日やから、そやろなあ。なんぞ、心当たりはあるか?」
「これといってないけど……。差出の消印が米花市やし……工藤の悪戯やないなら、最近解決した事件の関係者が米花市に4人……」
恨みを買った記憶はないが、逆恨みを考えると何処で誰が何を如何思ってるかなど計り知れない。
「府警に一通。あと、大滝の家にも来たらしいわ。さっき家のもんから連絡があった」
「大滝ハンのとこにもか……それがな、オヤジ。さっき寝屋川郵便局のモンから連絡があったんや」
「なに……」
電話の向こうで、「本部長!!」という声が聞こえる。とりあえず受け応える遠山のおっちゃんの声も聞こえてきた。
現金輸送車強盗事件で何か進展があったのかもしれない。
「すまん、平次。後んことは大滝に任せるが、ええか」
「ええで。オヤジはそっち頑張ってくれ。俺は、大丈夫やし」
「下手うつなや」
一度、電話が切れる。封筒を開けて中の手紙をざっと一読する。
「……ネメシス……言うたら、ギリシャ神話やな。復讐の女神やったやろか。この辺、和葉のが詳しいんやけどなぁ」
ぶつぶつと独りごちながら前髪を掻く。
「ベイカシに来い?なんやこれ。暗号……のつもりなんやろか。えらい単純やなあ。本気やろか。からかってるんか?」
これが平次が本気でとりくまないと手にも負えないようなレベルの暗号であれば工藤の悪戯という線も無くはないが、この暗号ではまずその線は無い。
工藤が簡単なものにしようと意図したとしても、これよりはもう少しセンスのあるものになるだろう。
そもそも、工藤の悪戯にしては性質が悪すぎる。奴の性格がいいとは口が裂けてもいわないが、かと言ってこんな性質の悪い悪戯をする奴ではない。
再び電話が鳴る。
「大滝ですわ。平ちゃん、こっちの話は大体本部長から聞きました。なんや、エライ逆恨み買ってるようで……」
「せや。そんで、さっきの車ん中の電話の話やねんけど」
とりあえず手短に説明する。
「せやけどこれだけやと悪戯か本気かはわからへん。暗号はちゃちいねんけどなあ」
「とりあえず、その手紙は局で足止めしますわ。寝屋川市以外にもあるやろから、とりあえず府下の郵便局にこっちから連絡さします。今から刑事を派遣して、指紋とらせますわ」
「現金輸送車強盗事件の犯人が、そっちの人員減らすための陽動やっとる可能性も考えてんけどな……それにしたって、あんまりにしょぼいしなあ」
「それはまあ、ちゃいますやろ。せや、本部長殿から伝言ですわ。とりあえず、人様に迷惑かけんようにて」
「ははは。ほな、そっちは頼みますわ」
電話を切る。
それにしても。今日、同様の手紙が既に数通配達されているらしい。確かな数は不明。
まさか。
ふと、嫌な考えが頭を過る。平次はバイクを走らせていた。
***
静かな住宅街の一角で、バイクを止める。時計を見るとまだ22時前。遠山家の二階の窓に明かりが見える。
呼び鈴を押すか、携帯を鳴らすか。ホンの一瞬逡巡する間に、窓が開いた。
「やっぱ平次や。どないしたん?こんな時間に」
「あ……」
いつもと変わらない幼馴染の笑顔に、自分の予感が杞憂に過ぎなかったことを知る。
落ち着いて考えれば、そうだ。
寝屋川郵便局から配達された数通。その中に遠山和葉宛が入っていれば、和葉がそれを読んでいれば、とっくに自分に何らかの連絡が来ていて当然だ。
あの手紙を、「悪戯やろ」と言って黙殺できる性格かどうかは、自分が一番良く知っている。
それが来ていないと言うことは、見ていないということだ。少し頭をめぐらせれば当然導き出される、結論。
思わず苦笑する。
それでも不安なら、まず電話なりなんなりで連絡をとればよかったのだ。何をうろたえて、こんな所までバイクを飛ばして来たんだか。
「ちょう、そこまで来たから……」
「何言うてんの?ちょう待って、そっち行くから」
「アホ。外寒いで。そこにおれ」
答える前に窓がしまり、やがて部屋の電気が消える。程なくして和葉が、サンダルを突っかけて家から出てきた。
「どないしたん?平次」
「ホンマ、大した用ちゃうっちうに、お前は。寒いやろ」
「べつに、そんなん。なあ、どないしたん?」
顔を覗き込まれて、つい視線を逸らす。
「あんな」
「何?」
「俺、元気やから」
「はあ?」
「無事やから。心配すなや」
「う、うん……。そんなん、見たらわかるけど……」
「ほなな」
「あ、平次!!」
バイクに跨り、エンジンをかける。
「もう!!平次!!全然、わけわからへんよ!!」
「そんだけや。なんもわけなんないわ」
「もう!!ホンマ、何しに来たんよ!!」
「和葉の……」
口を突いて出た言葉に自分で驚いて、急いでメットを被る。
「アタシが、どないしたん?もう!!平次!!??」
「なんもないわ。ほなな!!」
和葉を振り切るように走り出す。轟音と共に、後ろから幼馴染が呼ぶ声が聞こえた。軽くてを振って応える。
今自分は、なんと言おうとした?一体ここまで、自分は何をしに来たというのだ?
「なんちうこと言おうとすんのや。この口は」
ぶつぶつと自分の口に突っ込みを入れつつ責任を転嫁する。「和葉の顔が見たかったんや」。そんなこと、口が裂けても言えない。
バイクを走らせながら、急に自分が空腹なことに気付く。ふとラーメンが食べたくなり、進路を変更して近所の深夜営業のラーメン屋に立ち寄った。
とりあえず、明日の朝一で米花市に行くつもりだ。工藤は?連絡をとらなくても、まあ多分、いるだろう。留守なら、その時はその時だ。
オヤジは人様に迷惑をかけるなと言ったが、こればかりは米花市を指定してきた犯人を恨んでもらって、謹んで巻き込まれてもらおう。
それにしても。米花市を指定してきたのは犯人の庭だからだろうが。米花市には工藤がいる。毛利小五郎もいる。
二人の名声を知らないわけはない。自分のみならず、その二人も相手にする自信があるのか?それとも自分と交流があることを知らない?
わからない。
「ホンマ、読めへん奴やで。今度の相手は」
ラーメンを汁まで完食して、合掌して「ご馳走様」と呟く。700円置いて店を出る。幾分寒さが増している。
バイクを飛ばして自宅に戻る。と、門の前に怪しい人影を見咎めた。
……なんや?
子供、かと思ったが違う。背が低いのではなく門の前で蹲っているようだ。酔っ払い。浮浪者。まさか、例の手紙の関係?
バイクの音を聞きつけた相手がゆっくり振り返るのにあわせて、ライトを向ける。
「きゃっ」
「なっ……和葉……」
***
ライトを消して慌ててバイクから降りてメットをとる。そのメットを置くより早く何かが自分の腕にあたった。
何か、ではない。駆けて来た和葉が。その勢いでメットが手から落ち、空虚な音を立ててアスファルトを転がる。
「和葉」
応える声はない。無言で抱きしめられる。この細い腕にこれほどの力があったのかと思うほど、強く。
いつも側に居るとはいえ、こんな至近距離はホントに、ホントに子供の頃以来で。不覚にも言葉を失う。ようやく、搾り出すように。
「和葉、自分、どないしたんや……。なんで、ここに」
俯いたまま。ただ背中に回された腕に更に力が篭められる。ダイレクトに伝わるその温もりに眩暈を起こしたような錯覚に陥る。
目を閉じて一つため息をついて自分を落ち着ける。ポニーテールの、黄色いリボンがやけに目に付いた。
「和葉」
「……」
「和葉、きつい」
「……」
両腕に縋りつくように抱きすくめられて、身動きが取れない。
微かな嗚咽が聞こえた気がした。
「和葉、泣いとんのか?」
額を平次のシャツに擦りつけるようにして首を振る。黄色いリボンとポニーテールが揺れるのが、スローモーションのようにくっきりと見えた。
「……泣いとるやろ」
「……」
「なんや、どないしたんや。なんや怖い目に会うたんか」
一瞬、嫌なことが頭を過る。夜中に出かけて、誰かに襲われかけたとか。最近変質者の噂は聞かないが。このご時世何があってもおかしくない。
「和葉、大丈夫か」
「……平次や」
ポツリ、と呟く声が湿っていた。
「俺?」
「……平次や」
「俺、なんかしたか?」
少なくとも和葉を襲った記憶は無い。
「平次や」
「俺、なんもしてへんぞ」
「平次……」
「お、おう」
呼ばれてつい返事をした時、和葉がゆっくりと顔を上げた。暗闇の中、それでも両目が赤いのが分かる。
大きな瞳で真っ直ぐに見つめられ、視線が外せなくなる。冷たい指先がひんやりと頬に触れた。
「平次や」
「……自分、手ぇ冷たいで」
「平次ぃ」
その瞳が光ったかと思った瞬間、ポロポロと涙が溢れ出す。
「あ、アホ!!何泣いとんのや、自分!!」
慌ててズボンのポケットのハンカチを探る。探り当てるのとほぼ同時に改めて抱きつかれる。今度は辛うじて両手は逃れることができた。
勢いで、背中がバイクにあたり、バイクが塀にあたる。足を踏みしめて、和葉を受け止める。
「アホ……っ。平次の、アホ……っ!!!!」
「……和葉」
「もう……もう……」
両手に力が篭められる。強く。苦しいほどに強く。
「会えへん、かと、思たやん!!!!!!」
その背を、抱きしめ返そうかと逡巡し。ホンの少しの苦笑と共に優しくその髪を撫でるにとどまった。
「アホ。俺はここにおるっちうに」
「う」
嗚咽を飲み込んだ和葉は、そのまま泣き出す。塀に寄りかかったバイクに寄りかかかりながら。その髪を軽く撫でて泣き止むのをじっと待った。
バイクにあたる背が、少し痛かった。
***
「和葉」
和葉が泣きやみかけてきたのを察して声を掛ける。
「あんま泣くと、目ぇ溶けんで?」
「アホ」
背中に回されていた腕から力が抜ける。ゆっくりと預けていた身を起こす。それでも、顔を見られたくないのか俯いたまま両手で平次のシャツを握った。
「なんや。どないしたんや」
俯いた顔を覗き込むと、怒ったようにぷいっと顔をそむける。
「平次が、あんなこと、言うからや」
「あんなこと?」
「急に来て、元気やからとか、心配、すなとか、言うから」
バイクで走り去った平次を見送った後、急に胸騒ぎがした。何となく不安になり。
ふと、帰宅した時にポストに入っていた手紙が気になった。和葉宛の、白い封筒。差出人がないのが不審で、とりあえず父親が帰ってくるまで放って置こうとテーブルの上に投げ出してあった。
「……和葉んとこにも、来たんか」
「平次!!知ってるん!!??」
「……あの後、見たんやな」
葉書を見て。慌てて自転車で平次の家に向かって。なのに先にバイクで帰ったと思った平次は家にいなくて。静華もいなくて。広い服部家は妙に静かで。
「すまん。寄り道しとったんや。……携帯、鳴らしてくれれば」
「……慌てて、携帯忘れた」
「そら、無理やなあ」
平次にも、府警本部にも電話が出来ず。それよりもなによりも、自分の予感があたったのかと思うとそこから一歩も動けなくなった。
平次に、何かあったのだと。さっき自分に会いに来た平次は、平次ではなかったのではないかと。
あれは自分が見た幻だったのではないかと。もしくは。
「アホ。何言うとんのや。そんなわけ、あるかい」
宥めるように髪を撫でながら、苦笑する。
言われてみれば、自分の行動は誤解を招くのに十分だったように思える。感情的になった和葉の誤解も無理は無い。
「和葉に心配かけへんように言うたつもりやってんけど……却って心配かけてもうたんやな……」
「アホ!!急に紛らわしいこと、するからや」
「すまんかった」
和葉がゆっくり顔を上げる。
「俺、そう簡単にくたばらへんし。大丈夫やで、和葉」
「う、うん……」
見上げてくる瞳を真っ直ぐにみつめ返す。その瞳を、ホントに綺麗だとふと思った。
「あんなん、誰かの悪戯や。気にせぇへんで、ええで」
「うん」
「和葉が泣かなあかんこと、なんもないわ。だから、安心してええんやで」
「うん……」
自分を納得させるように一つ大きく頷き。自分の行動を思い返したのか、少し顔を赤らめて和葉が急に離れる。
「ご、ごめん……アタシ……またなんか、誤解して」
「早合点は和葉の十八番やしな。ま、今回はしゃあないわ。俺も悪かったし」
「ううん。アタシ……アタシ、ホンマ慌ててもうて……」
「……」
「もう、二度と」
声が、つまる。
「平次に、会われへん、か、と」
「!!」
再び泣きかけた和葉を、今度は迷わず抱きしめた。
「平次!!??」
驚いた和葉が泣くことも忘れて小さく叫ぶ。
「大丈夫や、俺、ここにおるし」
「平次……」
「死なへん。……絶対に、死なへんから。大丈夫や。な」
「うん……平次……」
「なんや?」
「約束してな。絶対、いなくなったり、せぇへん、て」
「……おう」
抱きしめた肩は小さくて。力を篭めたら折れてしまいそうな気がして。
なんだか、自分まで泣きたくなった。
この温もりを。一生忘れないと思った。
***
携帯が鳴らなければ、深夜の路上でずっと和葉を抱きしめていたかもしれない。
場違いなほど軽やかなメロディに二人とも現実に引き戻され、慌てて離れる。何となくお互い背を向けて、とりあえず平次は携帯に出る。
「俺やけど。なんや、おかんか。え?和葉?おるけど……ちょう待ってくれ。代わるわ」
現場を見られたわけでもないのについどぎまぎしてしまい。碌に和葉を見ずに携帯を差し出す。
「え、アタシ?」
不審気に携帯を受け取る。
「あ、おばちゃん。アタシやけど……え、お父ちゃんが?うん。うん。アタシ、携帯家に忘れてもうたん。うん。今、平次んちの前。うん。うん。わかった。平次にも伝えておく。うん。おばちゃん、ごめんな。心配かけて。お父ちゃんにも。うん。それじゃ」
携帯を切って平次に差し出す。
「どないしたんや」
「うん……お父ちゃんがうちに電話しても携帯にかけてもアタシが出ぇへんから心配してたって、おばちゃんが」
「大丈夫なんか?俺、家まで送るで」
「あ、おばちゃんが、今日は泊まってけって。お父ちゃんも帰れへんし、心配やから」
「うちに、か?」
別に和葉が服部家に泊まるのは珍しいことでもない。ないが。ついさっきまでの自分の行動を思い起こして思わず聞き返す。
「うん。おばちゃんも、すぐ府警から帰ってくるって」
「そか。それやったら、ええんちゃうか」
「……」
視線をさ迷わす和葉に、思わず平次も視線を外す。
「えっと……」
「な、なんや」
「あ、あの。ええと。ど、どないするん?平次、誰かに狙われてるんとちゃうの?」
「ああ。お前、ちゃんとあの日付見たか?」
「日付?」
「やっぱ碌に見ぃへんかったんやな。日付な、明後日なんや。悪戯やろうけど、まあ殺人予告いうか……」
「せやったら、明後日まで、どっか安全なトコに……」
メットを拾ってバイクを押して門の方へ向かうと、和葉が慌ててついてくる。
「……例えば?」
「た、例えば……府警本部とか……」
「俺におやじと泊り込め、いうんか?そもそもあそこは今現金輸送車強盗事件で一杯一杯や。邪魔は出来へん」
「せやったら……」
「とりあえず、東京行くわ」
「東京?蘭ちゃんとこ?」
「んー」
バイクを置きにガレージに向かう。鍵を渡しておいたのに、和葉は玄関の前で待っていた。
「そんなに心配なんやったら毛利のおっさんにでも相談するわ」
「でも……平次、大阪におった方がええのんちゃうの?」
「だから、悪戯やって言うてるやろ?こんなん」
「だって大阪中の平次の知り合い皆に送られててんやろ?手紙」
「……なんでお前がそこまで知ってんねん」
「さっきおばちゃんに電話で聞いた」
……余計なことを。
和葉の方を見ないように、とりあえず鍵を開けてさっさと家に入る。
「ま、大阪の俺の人間関係はばればれっちうわけや。せやったら、東京行ったほうがええやろ?」
「せやったら、アタシも行く」
「アホ。お前は関係ないやろ。どうせ手の込んだ悪戯やし」
「じゃあ、蘭ちゃんに会いに行くもん。遊びに行くんや。ええやん」
「あかん!!お前は大阪におれ!!俺と一緒におったらなにがあるかわからんやろ!!」
慌てて口を噤んでももう遅い。
「……やっぱ!!平次かてホンマは悪戯やと思ってへんのやろ?平次が遠くで危険な目に会うん、アタシ嫌や!!」
「もし本気やったらの話や。悪戯やって」
「嘘や!!平次、他になんか知ってるんちゃうん?アタシに、隠してるやろ!!」
「アホ。なんも隠してへんわ。とにかくお前はここにおるんや。それが一番安全やから」
「いやや!!アタシ、平次と一緒にいたいんやもん!!」
また。泣きそうな瞳で見上げられる。辛うじて。もう一度抱きしめたい衝動を抑えた。両手に、あの温もりが蘇る。
「お願いや。な」
***
どうしてこの時、頷いてしまったのか。後で、死ぬほど後悔した。
私的にラブなもの書いてますが、どーでしょー。いや、どーよ。ちうか、誰ですか、この人ら。
抱きついちゃったり抱きしめちゃったりどういうことー。そのスキンシップ度合いは!!
うわーん。すみません。なんかトチ狂っちゃいました。もういっそ、パラレルってことで。ぐはあ。
そもそも。元々ゲームのシナリオに結構無理があるのに(失言)、更にそこから自分的萌えシチュに持っていくために更に無理を。
平次は見てるけど、和葉はまだ見てない。で、和葉に何の情報も来ないってことは、まだ騒ぎにもなってない。
そんなの微妙過ぎーーーーーーーーーーー!!辻褄が合わないところは、目をつぶってください。<こら
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